47都道府県の柱プロジェクト~熊本県~
河津製材所(熊本県)
この「47都道府県の柱プロジェクト」シリーズでは、岐阜県の養老町・輪之内町にある「森のわくわくの庭」内で柱材として活用されている各県の木や、その柱材の提供者である事業体について紹介しています。
〈熊本県の森林・木〉
今回のプロジェクトで使用している熊本県の柱材は「小国杉」です。
九州のほぼ中心に位置する小国町、南小国町地域に植林されているスギ材をそのように称しています。
標高400~800mほどの参観寒冷地体で、夏は涼しく、冬は厳冬で-5℃以下になることがあり、積雪もあります。
平均気温は13℃と低く、年間降水量は約2,500mmと全国平均の約1,700mmを大きく上回っています。
この環境が小国杉の育成に大きくかかわっているのです。
また、良質な親木の性質がそのまま伝わる挿し木※による植林方法を行っており、山全体が均一の性質を持ちます。
強靭な材で台風などの被害にも強く折れにくいことで有名です。
特有の粘りとツヤがあり、建築や家具などに多く使用されています。
樹齢50~80年のスギは建物の骨格に使われる材木として最適で、加えて小国杉は有機酸の放散が少なく、木材特有の調湿機能や窒素酸化物の除去能力にも優れていることがわかっています。
※「挿し木」植物体の一部(幹・枝・葉・根など)を親木から切り取って土などにさして繁殖させる無性生殖法の一つ。
親木の遺伝質をそのまま受け継ぐことができる。(「森林・林業・木材辞典」より)
地域資源を最大限に活用したものづくり
昭和30年に現代表・河津新一さんの父が創業した「河津製材所」。
平成に入ってから在来工法住宅※が減少したことから、「役物」と呼ばれる高価で買い取りされる柱材生産から内装板材の生産へシフトしました。
現在では、内装材専門の木材加工所として稼働しています。
河津製材所で取り扱う商品は無塗装もしくは自然塗料を使用しています。
自然のままの素材を使うことが家や人、環境にとって優しく、木材に含まれる天然成分も効果を発揮します。
その分、傷がつきやすく汚れてしまうデメリットがあるのも確かです。
しかし、その傷や汚れは時間とともに深みを増し、ヴィンテージのような風合いを持つ壁や床となります。
商品の一つである、浮造り加工を施したフローリング材は、適度な凹凸で足の裏を刺激してくれます。
その肌触りは小国杉特有の油分の多さによりなめらかな仕上がりとなり、類をみないほどの光沢を持っています。
また、木材そのものだけではなく、空き地や田畑、温泉地熱などさまざまな地域資源をものづくりに活かし、地域循環を生み出し、地域活性化を図っています。
荒れた空き地は、天然の木材乾燥場として使用するなど、地域を想うがゆえの工夫がなされています。
※ 「在来工法住宅」:わが国の伝統的な住宅の建て方に基づき、木材の柱や梁など(軸組)で荷重を支える構造の軸組工法住宅のこと。(「森林・林業・木材辞典」より)
降り注ぐ太陽光と自然の風で、ゆっくり木材を乾燥させます
ほかにも、吹き出す地熱は、石油の代わりに木材乾燥の熱源にし、製造工程で出てくるカンナくずは圧縮してペレットに成形し、地域の暖房用のエネルギーにしています。
地元にあるもので作られる製品は無駄がなく、心地良いサイクルを生み出し、本当の意味で木材が循環型の資源として成り立つと考え
日々取り組んでいます。
木質ペレットは自分たちの地域でつくることができる再生可能エネルギーです